APAP NYC 観て歩き
アシテジ日本センター「アシテジ」No.125掲載 2014年4月発行
劇団かかし座  後藤 圭


私は毎年1月にニューヨークで行われるAPAPという催しに興味を持ち、今年は実際に見に行く事にしました。
APAPとはAssociation for Performing Arts Presentersの略で、実演芸術のプレゼンター、アーティスト、要するに実演する側の人、それを様々な形で紹介したり推薦したりする人々のアソシエイション=組織という事の様です。そしてAPAP NYCとはその年次総会、今年で57回目です。ヒルトン・ニューヨーク・ミッドタウンをメイン会場に、講演、フォーラム、ミーティング、ショーケースなどが数多く行われます。EXPOホールでは約400組が出展するブース展示が行われ、市内各所では1,000以上のアーティスト・ショーケースが用意されています。カンファレンスを主催するAPAPは、ワシントン D.C.を拠点とし、全米50州および世界15カ国の舞台芸術プレゼンター(2013年12月現在4,500人)で組織される国際協会です。
この巨大なカンファレンスに参加するためにはまず、APAPの会員にならなければなりません。そして会員になるカンパニーの年商によって会費が徴収されます。会費を納めて会員として登録されると、はじめてこのカンファレンスに参加することが出来る訳です。
さて、最初は催しが巨大すぎて何が何やらわからない様な状態でしたが、だんだん様子が判ってきました。とにかくここには舞台実演芸術のほとんどすべてのものが集まって来ています。少しブースを覗いてみると音楽ならポップス、ジャズ、民族的なものからクラシックオーケストラまでがブースを広げていますし、ダンス、演劇、ミュージカル、人形劇、マジック、とあらゆるカテゴリーのものがしかも世界の各国から集まって来ています。団体単位でブースを出しているところも有りますし、いくつもの作品や団体を持っている芸能事務所の様なブースも有ります。国単位のブースを出している所もあります。そして、そこここでかなり真剣なやり取りがされているのです。
ショーケースの方はというと、メイン会場のヒルトンでも多数行われているのですが、市内の各所でそれこそ自由に行われています。というのもショーケースを用意する場合、APAPに登録するという方式なので、ショーケースを企画したい人は、会期中のニューヨーク市内であればどこでも設定することができるのです。私もいくつものショーケースを見ることができました。ゴスペル、ジャズ、ダンス、などかなりの実力のアーティストたちがその舞台の一部を披露してくれます。児童劇及び児童向けのショーもあります。中でも日本でたびたび話題になるスウェーデンの児童劇が、かなりまとまった形でニューヨーク市内のスカンジナビアハウスという施設で「Swedish Performing Arts for Children and Young Audiences」を開催していました。私はここで「マーマレード」のフルパフォーマンスと、ショーケースを一つ見ることができました。
「マーマレード」は二人の男女の俳優による0123歳向けの作品。俳優の技術もしっかりしており、小さい子を良く惹きつけます。ショーケースは20分くらいずつ4作品程の紹介が有りましたが、良い作品が揃っている事は充分理解することが出来ました。サーカスの紹介など設備的に公演の無理なものについてはビデオ映像等も用意され、スウェーデンの海外進出に向けた力の入れ方が伺われるものでした。
そして今回非常に印象的だったのは、売り手も買い手も非常に熱心だという事です。売り手はショーケースの終わりに「私たちはすぐにも世界中どこにでも行かれる準備が出来ている。今回と同じ水準を保証する。」等々売り込みのスピーチをします。そして他の公演のロビーであってもフライヤーなど配ります。買い手も気に入るとその団体のマネージャーをすぐに探して話し込みます。日本に居ると、こんなに沢山の買い手がいるという事はなかなか実感出来ません。もちろん日本にも我々のステージを買ってくれる人達はいるのですが、(ですから我々も生き残っている訳ですが。)これだけのスケールのマーケットを目の前にする機会は無いでしょう。もちろん人気のないブースも有りますし、お客の少ないショーケースも有ります。それでも、世界中からAPAP NYCに臆する事無く集まって来て可能性を探っているアーティストの人達に、私はなにか大きな敬意を感じたのでした。