「影絵 家なき子」
(1956年11月15日 発行
山内義雄、富永惣一・監修/日本放送協会・編/日本放送出版協会・刊)


昭和30年にNHKで連続放送をした「家なき子」が、翌年こんな絵本にまとめられていました。このシリーズは26回の連続放送を行い、最終回の放送内容は2003年の1月にDVDでも発売されています。
劇団かかし座の最初期の仕事で、創立からまだ何年も経っていません。しかしこの絵本を見てみますと、現在でもかかし座で作り続けているかかし座式の影絵「ハーフトーン・シルエット」がこの時期にもう技術的にはほぼ完成されている事がよくわかります。そして細部に至るまで手を抜かずに作り込んでいる事にも驚かされます。
この手間のかかる「ハーフトーン・シルエット」を何十枚も作り続け、毎週1回全26回の放送(当時は生放送です)に間に合わせていた事は大変な事です。当時の劇団員や創立者・藤泰隆(後藤泰隆)の努力と労苦はいかばかりであったかと思わせるに充分な仕事です。
絵のスタイルこそ試行錯誤の後をまだ窺わせていますが、日本のテレビ放送の黎明期、最初期のかかし座の仕事の完成度の高さを立証する貴重な記録です。


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