しらさぎ座再オープンまでの道のり



2008年11月30日、2008年公演の千秋楽を迎え、しらさぎ座はしばしの休演期間に入りました。
とは言え、私たちまでが休演期間に入ったわけではありません!
横浜にあるかかし座の事務所では、2009年から上演を始める新作の仕込みが、着々と始まっていたのです。

横浜・かかし座事務所での仕込み
2009年1月、事務所では影絵・人形作りが本格的にスタートしました。

美術部では、演出のかかし座代表・後藤が描いた絵コンテを土台に、影絵の製作です。
今回の仕込みの中心は新作「力持ち小太郎」。
下呂の小坂地域が舞台のこの昔話には、小坂の美しい滝が数多く登場します。
美術部では小坂の風景写真を見、また小太郎が生きたと言われる南北朝時代の暮らしぶりを知るために、当時の絵巻物を見ながら、影絵を作っていきます。
けれども当然のことながら、小坂の風景は小太郎の時代のものとは変わってしまっています。
絵巻物も、南北朝時代は戦乱の世だったためか数が少なく、あったとしても貴族を描いたものが大半で、小太郎のような庶民を描いたものは限られているのです。
そのため当時の小坂をスクリーンに再現してゆく作業はなかなかに難しく、連日夜遅くまで続きました。

また、「力持ち小太郎」ではたくさんの人形が登場します。
主人公小太郎の人形だけでも、その数4体!
全長45cmという小振りなものから、膝上85cmの大きな上半身人形まで、場面によって使い分けます。
中でも苦労したのが、大石を持ち上げる“正面を向きの小太郎”
「一番の見せ場に登場するのだから、効果的な見せ方ができる人形を作りたい」という思いから、幾度も試作を重ねました。

下呂・しらさぎ座での仕込み
2009年2月、いよいよ現地しらさぎ座に入っての稽古です。
とは言え、すぐに稽古を始められたわけではありません。
休演期間中は舞台上からスクリーンや上演機材を撤収していました。
そこで前年しらさぎ座で公演を行っていた井ノ上さんたちが先乗りし、まずはスクリーンや機材を設置・調整したのでした。

2009年2月9日。しらさぎ座の準備も整い、出演者や美術部の面々が下呂に行き、演出・後藤の指示のもと、そう、最後の「追い込み」が始まったのです。

出演者の稽古は連日夜遅くまで続き、後藤の指導にも熱が入ります。
よりよい作品にすべく、台本は改変されて行きました。
セリフの変更はもちろんのこと、照明、音楽や効果音のタイミングといった段取りも日々変わっていきます。
限られた時間を無駄にしないためにも、出演者たちは後藤が不在のときも稽古を行い、その様子は言わずもがな、真剣そのものでした。
しかし連日長時間の稽古に加え、次々に変わっていく段取り。
頭では分かっているのに、体は思うように動きません。
上手くいかないことに苛立ちが募ります。
しかしそこは劇団かかし座、へこたれはしません。
班責・飯田さんのリーダーシップのもと、役者たちは団結して更に稽古に励むのでした。

一方、美術部の作業も連日明け方近くまで続きました。
今回、下呂での作業は影絵製作はもちろんのこと、「水」や「煙」といったエフェクト作りが中心となりました。
美術部にとって、この「エフェクト作り」はほぼ未知の領域。
どうしたら自然な水の流れ、煙のたなびきを表現できるのか?
課題は山のようにありました。

応援もありました
そんな下呂での仕込みに、普段は別作品を上演しているメンバーが、公演の合間を縫って応援に駆けつけてくれました。
彼らは人形製作、影絵製作を手伝うだけでなく、煮詰まっていた下呂のメンバーに息抜きや気分転換を勧めてくれ、精神的にも大きく助けられました。

そして公演前日まで、役者も美術スタッフも修正を加えながら、初日を迎えました。

しらさぎ座再オープン初日
2009年2月20日、約3ヶ月の休演期間を経て、しらさぎ座は再びオープンました。
この日は悪天候であったにも関わらず、たくさんの方がしらさぎ座に足をお運びになり、リニューアルした「しらさぎ伝説」、幕間の手影絵、そして新作「力持ち小太郎」を楽しんでゆかれました。

公演後、お客様の顔には笑顔があります。
「楽しかったです」「いい思い出になりました」というたくさんのご感想を頂く中、
どこからか「うんとこどっこいしょ…うんとこどっこいしょ…」という、可愛らしい声が。
見ると、2才くらいの男の子が楽しそうに「うんとこどっこいしょ」と何度も口ずさんでいるではありませんか。
「うんとこどっこいしょ」
それは「力持ち小太郎」の中で幾度か出てくるセリフです。
何度も何度も、楽しそうにセリフを口ずさむ姿を見て、大人の方だけでなく、小さなお子様も公演を楽しんで頂けたように思われました。
このように、しらさぎ座の再オープンは上々なものとなりました。

「どんなことでも最初からあきらめるな」
これは、「力持ち小太郎」の中で出て来るセリフです。
「よりよいものを作ろう」とあきらめずに取り組んできたからこそ、このように好評なしらさぎ座再オープンを迎えられたのかもしれません。
今年の公演は一部休演期間をはさみ、11月30日まで223日間行われます。
温泉を楽しんだ後は是非、しらさぎ座にて下呂の昔話を見、その舞台となった土地を散策しにいらして下さい。

(劇団かかし座・濱風R紀)

 

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