「下呂温泉の、合掌作りの芝居小屋で影絵を上演するかもしれない。それも一定の期間、毎日。」という話を、最初に聞いたのは07年の3月頃だったか?
私の返答は「下呂って何処?」だったと思う。
温泉に入りながら公演出来るなんて楽しそう…などと気楽に考えていた。
それから1年4ヶ月、いま私は下呂温泉合掌村「しらさぎ座」の舞台に立っている。
08年1月の劇団内の会議で、今日に至るまでの経緯や大体の内容が報告されたが、どのメンバーが下呂に出向するかなど、各上演班のスケジュール・メンバー調整については、まだまだ問題が山積みだった。
また、現地での取材や美術・音楽・衣装等のプランが本格的に動き出したのは4月に入ってからだろうか?
客演を含めた下呂メンバー(井ノ上・菊本・櫻本のポケット班)が正式に決定したのは6月に入ってからだった。
私が下呂に初めて訪れたのは5月の下旬。
そこでこの企画を情熱的に進めてきた、下呂市観光施設課長の斉藤さんと初めてお会いした。
正直、この日同行した劇団かかし座代表と舞台美術スタッフ、NHKプラネット中部支社の安井ディレクターとの現地会議は、いくつかのプランのくい違いにより、かなり白熱していた。
それを目の当たりにした私は少々たじろいだが、最後は「素晴らしいものにしましょう!」という建設的な意見で会議はまとまり、斉藤課長のパッションを胸に刻み、この日は下呂の温泉にも入らず帰団したのでありました。
≪7月15日の内覧会に向けてカウントダウンが始まる!≫
客演の坪内俊樹さん(岐阜県各務原市出身)との顔合わせ、影絵美術・人形の製作、下呂の「しらさぎ座」と横浜の「かかし座」での舞台稽古など、新作を仕込む時は常であるが、休みのない日が続く。
しかもその間には「アラジンと魔法のランプ」や「みなみのうみのおとぎばなし」の公演が入っているし、6月25日はNHK名古屋放送局での昼の番組「さらさらサラダ」の生放送に出演!「かかし座」と下呂「しらさぎ座」公演をPRした。
特に客演の坪内さんは、初めての影絵芝居に加え横浜に連泊しての稽古・人形製作・運転手・テレビ出演と、いきなりハードなスケジュールに巻き込まれた。
大丈夫かな?と心配したが、本人はというと、至って普通にマイペースな坪内君なのでありました。
7月7日以降は上演メンバーと代表の後藤、それにヘルプのシャドウ班や風班のメンバー・制作・美術班が、改装直後の劇団宿舎に大挙押し寄せた。「しらさぎ座」での稽古は大詰めを迎え、後藤圭の罵声と共に日々ヒートアップ!
なかなか演出のできる段階にいかない上演メンバーへの苛立と、宿舎に戻ってからの美術の作業による睡眠不足が、後藤圭の疲労を倍増させる。
「お前達は緊張感が無さ過ぎる!」「いつまでも同じ事をやらせるな!」「もっと頭を使ってやれよ!」などの声が飛ぶ中、悲しいかな、時間はどんどん過ぎて行く。
基本的な人形操作や台詞が言えない等の力不足がハッキリと表れ、客演の坪内さんはともかく、櫻本・菊本・井ノ上の3人は、克服出来ないそれぞれの課題が重くのしかかっていた。
櫻本と菊本に指導できない班責の井ノ上も問題ありか…。
≪食事に癒されました!≫
そんな私たち上演メンバーに力を与えてくれたのが、ヘルプで入ってくれた劇団員たちだった。
横浜の稽古場でも人形製作など風班のメンバーには助けて頂いたが、下呂でも「しらさぎ座」のプロジェクター台の調整、影絵人形や舞台小道具の作成など、下呂メンバーだけでは絶対に間に合わなかった事をやってくれた。
それに加え、宿舎の掃除や生活用品の買い出しなど、稽古以外で気になっていた事を順次解決してくれた。
そして何よりも気力を回復させてくれたのが、山下君・土山さん・浜崎さんの手料理だった!
これには後藤圭も大満足で、「こんなにキチンとした食事が毎回頂けるとは…」と絶賛していた。
本当に毎回献立を変え、バランスを考えて作って頂いた。
食事時は稽古の疲れを忘れさせてくれました。
みんなには本当に心から感謝いたします。本当にありがとう!
≪そして内覧会≫
人形操作・台詞・スクリーン前での表情など、まだまだ課題は山積みだが、前日の関係者のみの公開ゲネプロは、ある程度の手応えを感じる出来だった。
7月15日(火)内覧会当日、野村誠市長や観光関係者らが出席の中、まずは開演前にプレス発表。
緞帳裏で立ち聞きした様子では、各新聞記者からの質問「なぜ影絵なのか?」「観光の活性化になるのか?」「地元に資料のみ残る浄瑠璃を取り入れた狙いは?誰がやるのか?」など、一見冷たく感じられるような質問に、斉藤課長・NHKの安井ディレクター・後藤圭が答えていた。
市をあげての取り組みとなれば厳しくなるのも当然の事かもしれない。
内覧会の公演は、1ステージ目のラストに、スクリーンに本来の影絵映像ではないコンピューター画面が映るという手痛いミスがあったが、終演後のプレス側の反応は上々だった。
新聞社にテレビ局と、インタビューの質問もプレス発表のときと違い、「あなたにとって影絵の魅力は何でしょうか?」「何を一番見てほしいですか?」などの温かい質問(即答出来る質問)だけで、役者一同ホッとした。
2ステージ目は大きなミスも無く終演、役者及び関係者はようやく一息つく事が出来た。
内覧会終了後、企画提案者の斉藤課長と、締めの挨拶で言葉をつまらせたNHKの安井さん・劇団かかし座後藤の三人による、この企画初めての握手がとても印象的だった。
≪影絵昔話館「しらさぎ座」リニューアル・オープン!≫
7月20日(日)、お天気晴れ。
内覧会の後、各新聞・テレビの御好評を頂き、下呂昔話館「しらさぎ座」において、劇団かかし座のロングラン公演がスタートしました!
初日は1・2ステ−ジ合わせて244名の集客があり、公演後の感想も良かった。
21日(祝)は230名、22日は平日という事もあり111名でした。
もっともっと芝居の完成度を上げ、遠くからのお客様も、地元下呂の皆さんからも愛される「しらさぎ座」及び「かかし座」になる様、責任を持ってこの仕事に取り組みたいと思います。
疲れた心と身体を癒しに、どうぞ下呂温泉へお越し下さいませ!
平成20.7.27 下呂より 井ノ上聖之 「下呂初日に向けて」
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