【『2≠1+1』新作幼稚園公演2人班に関わって】
上演部 好村龍一

「役者2人だけでひとつの演目を行う」かかし座初の試み(たぶん)、この『ふたり班』演目は“3びきのこぶた”“赤ずきん”。本格的に始動したのは去年の12月暮れ。公演初日も1月半ばと決まっていて、始まりからラストスパートといった感じでした。

自分は今年度入団し、すぐに上演班シャドウ班に配属されました。自分のかかし座初年度1年間の仕事はほぼ上演回り。芝居に手影絵に人形操作にと日本各地の小学校を飛び回る毎日。TVの撮影や韓国での海外公演にも参加させていただき、1年が嵐のように早く過ぎていきました。
そんな1年で自分が関わっていた演目は、入団以前から上演中の演目。台詞から人形、演出も全てすでに出来上がっている作品。時々先輩方はその作品をつくっている当時の話をして盛り上がっていることもありました。かかし座の作品がいかにしてつくられているのか。そのときの楽しさや苦労。自分が出したものが後に継がれ残っていく様。関わった人にしか分からない様々なものを感じていました。
自分もかかし座の作品作りに早く関わりたい……この新作公演制作はずっと楽しみにしていたことでした。

今までの通常の演目では上演班は一班3〜5人、最低でも3人はいます。表へ出て芝居する、裏で人形を操作する、手影絵をする、音響・照明・映像操作をする、etc……。かかし座の演目はなかなか人手が必要です。それを「2人だけ」で行うのはとても大変。“三びきのこぶた”なんて、主役のブタの数だけですでにキャストの人数を超えています(笑)。演目も絵本の読み聞かせが基本のシンプルなものになる予定で話は進んでいました。
しかし、そうは問屋が卸しません。稽古の度に新しい注文を出す演出家、素敵なMEとともになかなか難解な歌唱を要求する作曲家、つぎつぎ増える人形の数と操作……かかし座のお芝居がシンプルなものになるはずがありませんでした。物語30分の中に濃縮還元120%を手抜きなく詰め込んでいかれました。
自分はそのめまぐるしい2〜3週間、台詞・歌覚え、音響・映像操作の段取り等…作品中の自分の役割に集中するのが精一杯です。人形の仕掛け考案や道具制作など、携わってみたいことには結局あまり立ち会うことはできませんでした。先輩方はその新作づくりをしながらも班責業務・美術制作・人形仕掛制作などなど、別途多忙スケジュールを難なくこなしていました。本当に頭が上がりません。

そんなこんなで初日を無事に迎えた「ふたり班」の演目“三びきのこぶた”“赤ずきん”。自分の役はふたつの演目での“わるもの”オオカミ。常に直接お客さんの園児さんたちに触れあえて、かまわれる存在。目の前のお客さんの熱にヒートアップが止みません。2人班の都合上、裏に表にと小スペース内を終始動き回るものですから冬でもしっかり汗をかいてしまいます。自分にはもっともっと落ち着きが必要です。
まだ出来たてホカホカで柔らかい部分も荒い部分もところどころ。でも公演を重ねるごとにどんどんと成長して練磨されます。子供も大人もどんな人が観ても楽しめる満足頂ける公演に、これからさらにつくりあげていきたいです。

公演終わった後の幼稚園・保育園の園児さんたちの笑顔を見て、直接の『ありがとう』『楽しかったよ』を聞くときが、“この仕事を始めて良かった”と一番に実感する瞬間です。まだまだ入社1年目。これから色んなことを経験し学ぶであろう自分。しかし、どんなに時が経っても“この瞬間”が自分のモチベーションなんだということを忘れないようにします。

最後に。若輩者の自分を温かく迎え見守り支えてくださった2人の班責、試作段階から最後まで新作つくりを支えてくれたポケット班のみなさん、いつも朝早くから夜遅くまで美術映像を描き続けてくださった美術班のみなさん、音のことだけではなくあらゆる視点から助言をくださった音響の都藤さん、自分たちの公演の合間を縫ってお手伝いくださった各上演班のみなさん……ふたり班の新作公演に関わった全ての方々へここにてお礼を申し上げます。
ありがとうございます、そして今後とも宜しくお願いします!