【 2005年度文化庁本物の舞台芸術体験事業を終えて】
魔法の島班 石井世紀
この事業は文字通り,子どもたちに本物の舞台芸術に実際に参加,体験してもらう事業です。

かかし座は、9・10月に東北地方16校の小中学校、そして追加公演で1・2月に4校、全20校で「魔法の島」を公演しました。
その中で,子どもたちに参加してもらったのは、冒頭の船が嵐に遭うシーンの船員役と,クライマックスの歌。
事前のワークショップは、私たちにとっても、よい経験になりました。
普段は公演の中でも手影絵のワークショップはやっているけど、お芝居や歌を指導するのは初めてだったからです。
私が担当したのは主に演技指導。はじめは子どもたちとどのように接したらよいか戸惑いました。子どもたちは言う事を聞いてくれるのだろうか?自分が先生のように段階を踏んで指導できるのだろうか?しかしやってみると、今まで劇団でやってきた事と,そう変わらない事に気づきました。
新人が初めて公演班についた時、まずウォーミングアップの中で声を出し、簡単なゲームをしてリラックスさせます。そして段取り稽古に入って行きます。もちろん80分くらいの芝居を何日もかけて稽古するので大変ですが、今回は芝居の一部とはいえ、5人から10人の子どもたちに90分の間に段取りを付けるのは本当に大変な作業でした。
下は小学校3年生から中学3年生まで。中には緊張からか恥ずかしくてなかなか大きな声が出せなかった子もいましたが、遊びの中でどんどんほぐれていって、みんな楽しんで取り組んでくれました。
しかし,私が一番気をつけたのは、調子に乗りすぎてふざけさせない事でした。
具体的な段取り稽古では,新人たちに教えるのと同様に,真剣に指導しました。
本番の舞台では、音響や照明、舞台セットなど様々なものが混在する中で演技しなければなりません。お芝居の現場は大変危険なのです。どの学校でも、子どもたちは我々の真剣な気持ちに応えてくれました。90分のワークショップで成長するのを感じました。
そして,本公演でまた会えるのがとても楽しみでした。

本公演では,まずリハーサルをします。実際の舞台に上がり、どのタイミングで、どこで動いて演技するか、同時に音響や照明のチェックもします。ワークショップの時よりさらに大きな演技、真剣な表情に喜びを感じました。
そして本番。のびのびと,思いっきり演技してくれました。そんな子どもたちに刺激を受け,我々にとっても特別な公演となりました。

この文化庁の事業は、子どもたちにはもちろん、我々舞台芸術に携わる者にとっても,有意義であると感じました。
終演後,共演した子どもたちの自信に溢れた笑顔は忘れられません。
まるでNHKの「ようこそ先輩」みたいでした。