「先生方も子どもと一緒に楽しく参加」
劇団かかし座 上田陽子(うえだよね)
絵のため、体育館の暗幕をすべて閉めきってしまいます。観劇される方には大変暑い思いをさせてしまいました。しかし、子どもたちは舞台に集中し楽しんで観劇してくれました。
この「巡回公演」では、都心の子どもを対象とした公演とはまったく違う反応があり、とても興味深いものがあります。例えば入場一つとっても子どもたちとの交流が持て、お芝居を始めるまで気持ちを高揚させることができます。
 ワークショップや手影絵でも、低学年高学年関係なくどんどん意欲的に参加してくれます。先生方も子どもたちと一緒に楽しく参加してくれます。
 今回のこの鹿児島県公演でも、先生方自らその場を盛りあげ、童心に帰ってワークショップに参加してくださり、それを見る子どもたちが更に高揚していくという相乗効果がありました。どの学校でも楽しい観劇会になりました。また、教育委員会の先生方にもたくさんお手伝いいただきました。
偶然宿舎で、菱刈町教育委員会の蔵内先生とお会いしお話を伺うことができました。青少年の環境問題、家庭教育の重要性のお話を始め、教育現場のお話を聞くことができました。「家に帰って、今日観た芝居のことについて家族と話し合うことに観劇会の意義があるんだ」という話が印象に残りました。
翌日の菱刈町の公演では、教育委員会の池田先生を始め何人かの方々が、搬入・搬出を手伝ってくださいました。司会進行も雰囲気を盛りあげていただきました。日頃の呼びっぱなし、やらせっぱなしの学校公演に閉口していましたので、私たちも自然に頑張ることができます。終了時には差し入れもいただき、長旅の私たちにはとても温かく感じました。
 今回の公演作品は北海道のアイヌの話でしたが、意外にも子どもたちの中にはアイヌをよく知っている子どもたちもいたようです。社会科で学習した学年や、学校によっては事前学習をされた学校もあったようです。
 公演終了後、アイヌの遊び「カリプペカプ」を運動会の種目に加えたいと、遊び方を詳しく尋ねてこられる先生もおられました。
観劇会を機に、それに関する学習や調べものをしたり、ましてやそれを遊びに取り入れたりすることは、さまざまな文化を理解するうえでも、とても重要なことだと思います。
観劇をすることによって、子どもたちの自発的な学習に対する意欲を膨らませていこうとする先生方、しかもそれを率先されている先生方のお姿を拝見して、私たちももっと頑張ろうという気にさせられました。
 公演終了後、搬出などをしていますと、子どもたちがどこからともなく集まってきて、私たちに話しかけてきます。
 今日作った手影絵のこと、今日の劇のどこがおもしろかったよ、などと感想も聞かせてくれます。学校を出るときなど、大勢の子どもたちが見送ってくれます。
とても名残惜しく、私たちにとっても感動的な公演でした。

(これは(社)日本児童演劇協会の機関紙「児童演劇」492号に掲載されたもので、2001年9月4〜22日に「ケト゚ペカムイの槍」が鹿児島県内の小学校を巡回公演した際の報告記事です。)