最新ニュース2009


2009/9/12

24時間テレビの本番を終えて

 

7月上旬。
九州、大分での公演ツアー中に、その仕事の話が飛び込んできました。
『24時間テレビで、耳の不自由な子どもたちに手影絵を教える』
24時間テレビといえば、1978年に開始して以来、今年で32回目を迎えるチャリティー番組です。わたしも小学生の頃、ちいさなビンに小銭を詰めて、募金会場に持っていった記憶があります。
その番組のお手伝いができるなんて、たいへん光栄と思いながら稽古初日を待ちました。

さて、その稽古初日。
稽古と言っても、この日は、参加する子どもたちと、NEWSの小山さん、そしてわれわれかかし座との初顔合わせのようなものでした。
まず、かかし座の手影絵パフォーマンスを観てもらいました。とたんに子どもたちからどよめきがあがります。ずいぶんと興味を持ってくれた様子。
続いて、代表的な手影絵をいくつか教えました。
耳が聞こえないというハンディキャップを持ちながらも、普段使っている手話が指先を器用にしているようで、子どもたちは、手影絵の指の組み方をどんどんマスターしていきました。むしろ、小山さんの方が大変でした(大人よりも子どものほうが、指先が柔らかいんです)。
手話と手影絵、共通するところがあるような気がしました。

ここまでは、わたしたちがいつも実施するワークショップと変わりがありません。
手影絵をスクリーンに映して、ちょっと動かしたり、大きくしたり小さくしたり、みんなでワイワイ楽しみました。
ところが、今回は、単なるワークショップではありません。
ショーにするのです。ビッグサイトで、たくさんのお客さんに観ていただくのです。
じっさいに手影絵のショーをごらんになった方なら分かると思いますが、手影絵を演じる人は、基本的に、膝を曲げ、身体を大きく後ろや横にそらした状態で、手影絵のフォルムとなる部分以外を隠す体勢を長時間取らなくてはなりません。簡単に言えば、『頭をスクリーンに映さないで』ということ。
これがなかなか難しいのです。
わたしたちでも、数ヶ月の稽古が必要な技術です。
それから、手影絵は形を作っただけでは完成ではありません。
影絵が本物の動物のように動いて、それで初めて完成なのです。

『とっても大変ですよ。それでもやりますか?』
かかし座代表である後藤の、厳しい言葉。
ですが、NEWSの小山さんと9名の子どもたちは、笑顔とガッツポーズで答えてくれました。
手影絵パフォーマー、『チーム小山』の誕生です。

そして、稽古が始まりました。
週に1〜2回、1回の稽古は約3時間ほどです。
稽古が何度か始まって、教えているわたしたちがまず壁に直面。
『教えたいことがなかなか伝わらない』
もちろん、手話通訳の方もいらっしゃいますから、ある程度のことは伝わります。
しかし、指の組み方のちょっとした調節、向きや角度の微妙な変化などを伝えるのがなかなか難しいのです。
ウサギが跳ねるときの手首の微妙なひねり具合。
動物が振り向く際の、自分の身体の向きなど。
とくに難しかったのは、ペンギンの親子のシーンでした。ペンギンの子役がけつまずいて転ぶ演技があるのです。これがなかなか難しい。
親子で手をつないで歩いていく演技も難しい。なにもない空間で、何かにさわったり転んだりするパントマイム的な部分を教えるときは、まさに試行錯誤の連続でした。
じっさいに自分自身が転ぶ姿を見せたり、手をつなぐ姿を見せたり、スクリーンに目印をつけたり。

小山さんも忙しい中、ほぼ毎回のように稽古にいらっしゃいました。
かれは、手話も手影絵も両方憶えながら、なおかつパフォーマンス全体の構成も考えなくてはいけません。
それでも、毎回お会いするたびに上達していく小山さんの手話に、わたしたちは感心しっぱなしでした。今回の企画で彼は『チーム小山』のリーダーとして、脚色、演出、出演と3つの役柄をうけもつ立場。スクリーン裏では、子どもたちに音楽に合わせて手話で指示を出したり、自分も手影絵を出したりと八面六臂の働きでした。

8月上旬、小山さんが決めた『親子の絆』というテーマのもとに、パフォーマンスの内容が決まり、使用する音楽も、コブクロさんの『蕾』に決定。
小山さんから子どもたちに、本番の衣装である今年の24時間テレビのチャリTシャツと、バレエシューズがプレゼントされ、いよいよ本番への意気も上がっていきました。
本番が近づくにつれて、稽古の中身もレベルが上がっていきました。

そして本番の日を迎えました。
ご存知のように、本番は、生放送です。
前日のリハーサルは完璧でした。
舞台裏で出番を待つ子どもたち。その目には少し緊張した様子も見られましたが、なぜか舞台に立たない私たちも緊張していました。バックステージで待機している私も、憶えたての手話でみんなの緊張をほぐそうとしていたのですが、実際、私の方がかれらよりも緊張していたでしょう。
そんな時に、番組スタッフさんから衝撃の言葉が!
『影絵の装置のセッティングをCM放送中に終えてください』
前日までの打合せでは、セッティングに15分もらえる予定だったのですが、いざ当日、しかも直前に2分に変更に!
少し焦りましたが、実際の作業時間としてはそうかからない準備でしたから、とにかく慌てずに落ち着いて実行。
セッティングは無事終了し、そして本番。
パフォーマンスは、ご覧になった皆さんならお分かりかと思いますが、大成功!
そして、終演後の小山さんの感極まったコメントと、子どもたちから両親への感謝の言葉にわたしたちかかし座メンバーも思わず涙でした。

 

出演が終わったあとで撮影した、『チーム小山』メンバーの記念写真です(この時間帯、小山さんはまだ生放送中でした!)。

黄色の、24時間テレビチャリTシャツを着た子たちが、出演メンバー。
向かって左奥から1人目の方が、小山さんの手話の先生。その方からさらに3名が制作会社創輝のスタッフ。
手前左側より4人が、かかし座メンバー。

 

NEWSの小山さん、9人の手影絵パフォーマーたち、テレビ番組制作会社の創輝のスタッフの皆さん、本当にお疲れさまでした!

そして最後に、この稽古を通して手話に興味を持った私は、手話を本格的に学ぼうと思い立ったのでした。

上演部 飯田周一
2009/9/8